「メーデー、メーデー」

PL人数:3人

推定プレイ時間:3時間前後

 

 

●PLへの公開情報

リトライ:2

初期グリット:3

チャレンジ:2

クエリー:3

 

 

●シナリオ背景

 日々汗水を垂らしながら働き社会の基盤を支える数多くの労働者。そんな彼らの心に、ヴィラン組織である「愛の宿り木」がつけ込んだ!働く人々を中心に、洗脳に近いカウンセリングを続けた結果、5月1日、すなわち「労働者の日」である”メーデー”に彼らが暴動を起こすように仕組んたのだ。

 このままでは大規模な暴動は免れず、労働者本人はもちろんの事、それ以外の多くの民衆すらも被害が及ぶことは明らかだ。

 ヒーローは人々の心を守り通すため、愛の宿り木を率いるオールマザーを打ち倒すことができるのだろうか!

 

 

●エントリー

・エントリー1:

 キミはヒーローだ。そんなキミには悩みがある。それは最近出来たものかもしれないし、遠い過去から背負っているものなのかもしれない。どちらにせよ、その悩みの所為で深く深く心を抉られる気持ちになるのには変わりがないのだ。

 そんな中、キミはヒーロー向け相談サービスの存在を知る。物は試しだ。この苦しみとどう付き合っていくか考える助けになってくれるかもしれない。キミの足は、ゆっくりと相談所の所在地へと向かっていく。

 

・エントリー2:

 キミは散歩もしくはパトロールをしている最中のヒーローだ。キミが道を歩いていると、突如道の向かい側に建っていたビルが轟音とともに炎上し始める。怒声、叫び声、泣き声、絶叫、負の感情全てが入り混じったその音は、キミの耳にもすぐに届くことだろう。

 すぐさま救助活動を行っている最中、キミは1つの大きな影がビルから飛び立つのを発見する。それは「愛の宿り木」が飼っている巨大なオウム、赤羽だった。真っ赤なソレは、一直線にどこかを目指して飛んでいくようだ。

 

・エントリー3:

 キミはヒーローだ。そんなキミには1人の友人がいる。社会人として忙しく働きながらも、キミの活動を支えてくれている大切な友人だ。しかし、最近そんな友人の挙動に違和感を感じる。致命的に何かがおかしいという訳ではないのだが、長年の付き合いかヒーローの勘か、確かに胸がざわつく違和感がある。

 そんな折、ちょうど当人から食事の誘いが舞い込んだ。もしかすれば、違和感の正体を掴めるかもしれない。キミはその誘いを了承し、レストランへと向かった。

 

 

●導入フェイズ!

 

-イベント1:心の相談所-

登場PC:①

場所:相談所

~状況1~

 キミは大きな悩みを抱えるヒーローだ。その悩みは絶えず君を蝕み、最近ではヒーロー活動にまで影響を及ぼす始末だ。このままではまずいと感じたのか、それとも周りから心配だと進言されたのか、何はともあれ、キミは1つの相談所へ向かうことを決意する。

 その相談所は、ヒーローを対象とした専門的なカウンセリングを行ってくれるという心の相談所だ。実際、ヒーローを名乗る人々が増えてきたことによるニーズの上昇から、ヒーロー専門の相談所を銘打つ事業も増えており、通っている人からの口コミも悪くない。

 

 現在は4月の半ばの話である。街中にぽつんと立ち並ぶビルの1つ、その階段をキミは上っていく。小さな相談所の扉には、木でできた看板が立てかけられており、「心の相談所」と記されている。扉を開ければ、その先には落ち着いた雰囲気のゆったりとした空間が広がっている。その奥から顔を出したのは、なんとヴィラン組織「愛の宿り木」の会長であるオールマザーだ。

 

「おや、珍しいお客様。ようこそいらっしゃいました。こちら、悩める全ての人々の支えとなることを目指しております、心の相談所”愛の宿り木”本部……ひとまずお上がりください♡」

「本日は、お越しいただきありがとうございます、疲れたでしょう♡お茶と……あら、お茶菓子が切れてるみたい。しばらくお待ちくださいね、今お持ちしますから♡」

 

~解説1~

 ①が自身の悩みと向き合うために相談所へ足を運ぶ場面だ。今回ヒーローが背負う悩みは、PLが自由に決めてもらって構わない。

 愛の宿り木は、別の相談所のすぐ近くに本部を移しクライアントを横取りする場合もある。今回はそのケースだ。①が訪れるハズだった相談所は、この愛の宿り木本部の1つ上の階だ。

 ここではオールマザーはひたすら①の身を案じ語りかけてくる。敵意や悪意を一切汲み取れないのが、逆に不安を駆り立てるかもしれない。

 

~状況2~

 キミはオールマザーに対し敵対的な行動に移ったり、逆に流されるままに中に案内されたりするかもしれない。しばらくのやり取りが行われたのち、突然街中から女性の叫び声が聞こえてくる。

 

「あら、悲しい。あなたのような素敵なヒーローに牙を向けられてしまうなんて……」

「この騒ぎ、うふふっ。先ほどのクライアント様かしら♡」

「本当なら、もっとじっくり、じぃっくりとオハナシしたいのですが……申し訳ありません。こちらも、もう少し忙しい日が続きそうで……。ですから、次の面接は、メーデーに行いましょう。救いを求める声が響く、素敵で祝福すべき日に♡」

「では、それまでヒーロー様♡ご無理はなさらず、お過ごしください♡」

 

 オールマザーは窓枠にもたれるように体勢を崩したかと思えば、そのままぐらりと身体を傾け外へと落ちていく。駆け寄ってみても、もうどこにもマザーの姿は無い。しかし、街中の騒ぎは大きくなる一方だ。

 

 キミが駆けつければ、大通りで1人のサラリーマン風の男性が半狂乱になりながら道行く人々を刃物で傷つけている様子が見て取れる。キミの力を持ってすればすぐに取り押さえることが可能だ。無力化された彼は「最高の気分だ!!俺は幸せだ!!」と叫ぶばかりで話にはならない。愛の宿り木の被害にあった民衆の典型的な例だ。この場はすぐに警察やG6の職員が駆け付け、騒ぎは収束を迎える。

 一連の騒動が落ち着けば、キミも日常へ戻って行くこととなるだろう。オールマザーの言っていた「メーデー」が、やけに気になる……。

 

~解説2~

 この時点でオールマザーは、5月1日に一斉に労働者を焚き付け暴動を起こさせようというメーデー計画を進めている。そんな中で、不安を胸に抱くヒーローがやってきてくれたという事もあり彼女は①を絶望させ「愛の宿り木」に取り入れることはできないかとも思い至る。暴動が起こった上に、希望の象徴であるヒーローが寝返ったともなれば世間が受けるショックは計り知れないものだろう。

 街で暴れていた男性は、メーデーを待ちきれなかったせっかちさんである。

 

エンドチェック!

□①がオールマザーと出会った

□メーデーに何かが起こることを仄めかした

 

-イベント2:爆発炎上-

登場PC:②

場所:ビルが立ち並ぶ大通り

~状況1~

 時は5月1日。キミは何らかの用で、この街一番の大通りを歩いている。買い物やパトロール、はたまたデートの途中だったりするのかもしれない。最近は目だった大きな事件なども起きておらず、まさに穏やかな日常そのものだ。

 そんな折……キミの目と鼻の先にあるビルが、冗談のような火柱を上げながら爆発炎上する。これまで平和だった分を取り戻すと言わんばかりのものすごい勢いだ。ビルの中からの悲鳴や泣き声がここまで響いてくる。驚くよりも先に、キミの足はビルの方へ駆けていくことだろう。

 命からがら救出された会社員たちは、キミに感謝の言葉を述べる。

 

「助けてくださりありがとうございます…!!ヒーロー!!も、もう御仕舞いかと思った……。」

「実は、社員の一人が動力室や資料庫にガソリンを撒き火を放ったようで……」

「あぁ……来週のプロジェクト資料も全部燃えカスか……。けど、命あっての物種だよなぁ……」

 

~解説1~

 余りの疲労から、愛の宿り木に通ってしまった社畜社員による計画的な犯行だ。このビルの爆発が、メーデー計画の始まりの合図となっている。

 もしかしたら、助け出した人々は目に隈を作っている人々が多いかもしれない。

 

~状況2~

 キミがヒーローの力を存分に発揮し救助活動を進めていると、とある方向から羽ばたく音が聞こえてくる。そちらに目をやれば、燃えるような赤色の羽を携えた巨大な鳥がこのビルから飛び立ちどこかへ向かっていく光景を見て取れた。あれは、「愛の宿り木」に飼われている巨大オウムの赤羽では……?とても嫌な予感がする。出来うる限りの救助を終えたキミは、その赤羽を追うために地を蹴った。

 

~解説2~

 赤羽はメーデー作戦の進捗を報告するために何度もオールマザーが居る場所と事件現場を往復している。この赤羽の行方は、ヒーローにとって絶好の手がかりと言えるだろう。

 

エンドチェック!

□ビルに残された人々を救助した

□どこかへ飛び去る赤羽を目撃した

 

-イベント3:友の豹変-

登場PC:③

場所:食事が出来る場所

~状況1~

 時は5月1日、キミは友人に誘われ素敵なランチを共に過ごしている。ヒーローであるキミを昔から支えてきた頼れる友人だ。しかし、ここ最近友人の様子がどこかおかしい日々が続いていた。何がおかしいとはハッキリと分からないのだが、確かな違和感を感じていたのだ。そのことを問いただすためにも、この食事の機会はキミにとって願っても無いものだった。現状、特に変わった様子もなく、いつも通りの穏やかな会話が続いている。

 

「今日は晴れてよかったねぇ。しばらくお天気みたいだから、熱中症とかは気をつけてね!いくら身体が強いって言っても、油断は禁物だからね」

「今年の夏は暑くなりそう!雨でも降ってくれれば、多少はマシなんだろうけど~」

 

 そんな他愛の無い会話が続く。しかしキミが友人に最近の様子について問いただせば、和やかな食事の空気は一変する。

 

「最近、どうか、したかだって……?どうしたもこうしたもねえよ!!!」

「ずっとヘラヘラヘラヘラしやがって、内心じゃ僕のことを馬鹿にしているんだろう!?分かってるんだよ!!なんの力もない一般人だって笑ってるんだろう!!!あんたみたいにスポットライトが当たることもなく小さな会社の小さな一室で一生を終えていく僕のことを!!!!」

「もう、我慢の限界なんだ!!最初から、最初からこうすればよかったんだ!!よかった、あの人に出会えて!!あの人に背中を押してもらえて!!」

「僕の為に、死んでくれよ!!」

 

 友人は持っていたナイフを突き立てようとするも、ヒーローであるキミにその一撃が届くはずもない。その目は依然ギラついており、口元には僅かではあるが歪んだ笑みが見て取れる。様子がおかしいのは明らかだ。

 

~解説1~

 現人類の会社員である③の友人も「愛の宿り木」に通っていた被害者の1人だ。最初は「仕事で小さなミスをしてしまった」といった他愛ない悩みだったのだが、オールマザーたちによりその怒りを膨らせた上で矛先を無理やり③へ向けさせられている。

 

~状況2~

 その瞬間、空間を揺さぶるような揺れが襲い掛かる。どうやら大通りのようだ。続いて何かが倒壊する音、爆発する音、炎上する音が響き続ける。ふと友人のほうへ視線を戻せば、そこにはぐったりと気を失った友人を持ち上げる小さな子供の姿があった。「愛の宿り木」幹部である、ユーアーハッピーだ。

 

「わーーーっ!!見つかっちゃった!!こんにちはーっ☆」

「ぼくのこと知ってるかな?うん!愛の宿り木メンバー、ユーアーハッピーだよぉ☆」

「なんでこの人を連れて行くのかって?決まってるじゃないか~!!今日頑張ってもらう主役さんの一人なんだから、そりゃあねぇ!!☆」

「いいじゃんいいじゃん!!あんな酷いこと言われて、ヒーローさんもいかりしんとー!!でっしょーー!!ここでぼくを無視すれば~この人はやりたいことができて~ヒーローさんはこれ以上嫌な思いをしなくて済む~!!!サイッコーーーーにハッピーだ!!!!☆☆☆」

 

 更に大きな羽ばたきの音が聞こえたかと思えば、店の入り口に赤羽が着地していることに気が付く。ユーアーハッピーは力いっぱい友人を放り投げると、赤羽にキャッチさせそのまま飛ぶように命じる。ユーアーハッピー自身も羽をパタパタ小刻みに動かし宙に浮き、赤羽を追うようにしてこの場を去りゆくことだろう。

 

「それじゃあねーーっ!!ヒーローさんに沢山のハッピーがありますように!!☆ばいばーーーーいっ!!☆☆☆」

 

~解説2~

 ③が友人を連れ去られる場面だ。楽しそうに消えていくユーアーハッピーを見れば、友人がよくないことに巻き込まれていることは明白だ。まだ完全に彼らの姿は消えていない。迷ってる暇はないだろうヒーロー!

 

エンドチェック!

□友人の豹変を見た

□ハッピーと会話した

 

 

●展開フェイズ!

 

-イベント4:疾走-

[クエリー:②]

登場PC:②

場所:大通りの路地裏

~状況1~

 キミが赤羽を追うために大通りを駆け抜けていると、突如路地裏の方から子どもの叫び声が響く。どうやら我を失ったサラリーマンが、小さい子を襲っているようだ。

 

「子どもには似合わない鞄じゃないか!そうだ、おじさんが貰ってあげよう!」

「だ、だめ…!これはお父さんの…!」

 

 子どもは革鞄を抱きしめており、サラリーマンはその中の金品を狙っているのか子どもに腕を伸ばしている。キミであれば、サラリーマンを取り押さえ助けるのは容易であろう。様子からして、愛の宿り木の影響を受けているのは明らかだ。

 助けられた子どもは、震える声で礼を述べる。そして今一度強く鞄を抱きしめると、意を決したようにキミにこう切り出した。

 

「あのっ、ひーろーさん、ありがとうございました…!」

「わ、わたし、おとーさんのわすれものをとどけに、はしってたんですけど」

「おとーさん、さいきんつかれてたみたいで、えっと、なんかさいきんずっとへんで」

「きょうも、ものすごくはやくおうちでていって、かばんもわすれてて」

「……あ、あの、ひーろーさん、も、もしかしてわたしのおとーさんなにかわるいことしちゃったんですか?」

「ひーろーさん、わたしのおとーさんつかまえちゃうの……?」

 

~解説1~

 この子どもは最初のビルを燃やした人物の子どもであり、子ども特有の敏感さから父親が何か事件に巻き込まれていることを薄々察している。仕事鞄に爆破された会社のエンブレムが付いているかもしれない。不安がる子どもに、どう切り返すもヒーロー次第だ。

 

~状況2~

 そうこうしてる内にも、羽ばたきの音はどんどん小さくなっている。子どもに見送られながら再び走り出せば、丁度近くのレストランから1人のヒーローが飛び出してくるのが分かるだろう。③だ。

 ②と③の目指すべき場所は同じである。街中の騒動は大きくなる一方だ。2人は足並みをそろえて赤羽とユーアーハッピーを追いかけることになるだろう。

 

~解説2~

 このタイミングで②と③が合流し時系列が噛み合うこととなる。

 互いに面識があるのかどうかなど決まっていなければ、ここで決めるとよいだろう。

 

エンドチェック!

□子どもを助けた

□②と③が合流した

□グリットを1点得た

 

-イベント5:誘い-

[クエリー:①]

登場PC:①

場所:①の家

~状況1~

 キミは自宅で穏やかな時間を過ごしている。5月1日、やけに街が騒がしい。ニュースを付けてみれば、そこには放火や強盗、様々な犯罪行為に勤しむスーツ姿の人々が映し出されていた。明らかに非常事態だ。キミは準備を整え玄関の扉を開ける。その先に居たのは燕尾服に身を包んだ初老の男性だ。キミは彼を知っている。「愛の宿り木」幹部であるDr.ココロだ。

 

「お迎えにあがりました。ヒーロー様」

「本日は5月1日、そうメーデー。マザーとのオハナシの日でございます」

「あぁ、あの騒動が気がかりで?いいえヒーロー様、違います。あれは労働者たちの心の解放活動とでも申しましょうか」

「ニュースでの彼らをご覧になったでしょう?皆、日々の重責から解放されとても幸せそうだ。貴方様も同じようになりたいでしょう?」

「貴方様も、何か苦しまれていることがあるからこそ、我々の元を訪ねたのでは?」

「……ふふ、そうですね。率直に申し上げましょう。我々と共に歩みませんか?」

「他者を救うヒーローという強い立場に居ながらもなお、悩みを持ち苦しむ繊細な心を併せ持つあなたは、きっと悩める民衆たちの良き相談相手になれるとマザーはお考えです。」

「いかがでしょう?愛の宿り木一同、みな歓迎いたしますよ」

 

~解説1~

 ①を引き込みにDr.ココロがやってくるシーンだ。①が誘いを断るのか、それともどのような形であれ承諾するか否かでDr.ココロの反応も変わることだろう。

 どちらにせよ、愛の宿り木に引き込まれた後に待っているのは、歓迎会ではなく完膚なきまでに心を壊す為の洗脳だろう。

 

~状況2-1~

 誘いを断った場合、Dr.ココロは残念そうにしながらも渋々といった様子で退散する。

 

「ふむ、それは大層残念にございます」

「しかし、いつでも我々は待っておりますよ。貴方様が悩み続ける限り、我々はいつでも貴方様の支えになりましょう。」

 

そして彼が去って数秒もしない後に道の向こうから猛スピードで駆け抜けてくる2つの影がある。②と③だ!

 

~状況2-2~

 誘いを受けた場合、Dr.ココロは満足そうに笑みを浮かべキミに恭しく手を差し出してくる。しかしその手は完全に伸ばされる前にピタリと止まり、彼は道の向こうを見やる。

 

「おやおやこれは騒々しい、いけませんね」

「申し訳ございません、どうやら邪魔が入ってしまったようで」

「メーデーは長い、きっと本日、またどこかで出会えることでしょう。そのときは、なにとぞよろしく御願いいたしましょう。」

 

そう言った彼は、残念そうに退散していく。そして間もなくやってくるのは、ヒーローである②と③だ!

 

~解説2~

 Dr.ココロは何かの薬を飲んだかと思えば、猛烈な勢いで地を蹴り赤羽とユーアーハッピーに付いていく。両者とも空を飛べるので、Dr.ココロは少々追いかけるのが大変そうだ。

 ここでヒーローが全員集合することとなる。改めて自己紹介を交わすのもいいだろう。

 

エンドチェック!

□ココロの誘いの答えを出した

□①②③が合流した

□グリットを1点得た

 

-イベント6:活劇-

 [チャレンジ1]

登場PC:全PC

場所:大通り

 

~状況~

 さぁ、いざ「愛の宿り木」を追う時間だ!

 街では、数多くの労働者が何かのタガが外れたように破壊活動を繰り返している。宝石店に押し入りありったけの宝石を鞄に詰め込む者、嫌がる女性の首根っこを掴み無理やり路地裏へ引きずり込んでいく者、自分にぶつかった相手を押し倒し馬乗りになり……首に手をかける者。彼らはみな、思い思いの心の内を叫ぶ。

「もう、もう我慢できない!!」

「あんな、馬車馬のように働く日々は二度とごめんだ!!」

「俺たちだって自由だ!!好きなように生きるんだ!!」

 我を失った労働者たちが好き勝手に暴れる街を、愛の宿り木メンバーはぐんぐんと突っ切っていく。

 立ち止まっている暇はない!

 

~解説~

 1回目のチャレンジイベントだ。このチャレンジでは同一PCが2つ以上の判定を行うことはできない。

 

判定1:白兵・射撃・霊能

街で暴れる人々を取り押さえる

 

判定2:交渉+10%

愛の宿り木が向かった先を目撃者から聞きこむ

 

判定3:射撃・霊能-20%

(判定の出目が50以下だった場合、撃ち落とした赤羽が運良くDr.ココロに激突する)

赤羽に攻撃を当て、③の友人を取り返す

 

失敗:全てのチャレンジを達成できなかった場合、決戦フェイズに赤羽が加わる。

判定3に出目50以下で成功した場合、決戦フェイズにてDr.ココロがやや弱体化される。(各エナジー-10)

 

-イベント7:感情-

 [クエリー:③]

登場PC:③(①②)

場所:大通り

~状況1~

 赤羽から解放された友人はふらりふらりと③の前までやってくる(チャレンジに失敗していた場合も、赤羽はキミたちを足止めするために友人を空から落とす)。手にはレストランで手に入れたと思しきナイフが握りこまれている。しかし、それはキミに振り下ろされることは無く、友人はぺたりと地面へへたり込む。

 

「ごめん、ごめんね……!ぼくのことを案じてここまで来てくれたキミに、こんなもの突き立てられる訳がないじゃないか……!」

「全部ぼくが悪いんだよね……、あんな、愛の宿り木なんて頼ってしまったぼくが……」

「最初は仕事の相談だった。本当に親身に話を聴いてくれるものだから、話に聞くほど悪い人たちじゃないんじゃないかって……。でも、話を続けていくと、どんどんキミに憎しみが向いて行って、そのときはなにかおかしいって思うこともできなくて」

「嫌だ、嫌なんだ!!キミに対して腹立たしいなんて思うなんて!!でも、今沸き起こってるこの憎しみは嘘じゃない!!自分でも分からない!!ごめんね!!本当にごめんね!!こんな汚い感情、嫌だ!!キミのこと、好きなのに!!大切な友達なのに!!こんな自分が、嫌だ!!」

 

~解説1~

 マザーは人の感情を操る術を持っている。仕事疲れや日々の細やかな悩みなど、友人がもともと持っていた劣等感を増大させ、③にぶつけさせるように仕向けたのだ。

 本来優しい友人が我に返ったとき、自身の感情に耐え切れなくなるのもお見通しだろう。

 

~状況2~

 そして友人は手に持っていたナイフを自らの首に突き立てようとする。止めに入れば友人は混乱しきった目でこう問いかける。

 

「どうして止めるの!?キミに、あんなに酷いこと言ったんだよ!?僕のこと嫌いでしょう!?嫌な気持ちになったんでしょう!?なんで!!なんで!?」

 

 憔悴しきった彼の目が、救いを求めていることは明らかだ。ヒーロー、そして友人でもあるキミはなんと声をかけるだろうか?

 

~解説2~

 ③へのクエリーイベントだ。③が思うままに答えて欲しい。優しい言葉をかけるのも、厳しい言葉をかけるのも、すべてはヒーロー次第だ。

 どうであれ、③の反応を受けた友人は我を取り戻す。

 

エンドチェック!

□友人と向き合った

□グリットを1点得た

 

-イベント8:加速-

 [チャレンジ2]

登場PC:全PC

場所:大通り

~状況~

 正気を取り戻した友人は、愛の宿り木が画策した今回のメーデー計画の知るところを教えてくれる。どうやら、悩める大勢の労働者たちを一念発起させ5月1日に暴動を起こさせるといったものであるそうだ。

 詳しい場所までは分からないものの、愛の宿り木は最終的に街の大きな施設を破壊させることを目論んでいるようだ。友人は憑き物が落ちたような目でキミたちヒーローにこう叫ぶ。

 

「もう、助けを求める先を間違えたりはしない!」

「救難信号は、正しい場所へ発信してこそ……だもんね!!だから、御願い!!」

「助けてヒーロー!!」

 

~解説~

 2回目のチャレンジイベントとなる。今回のチャレンジでは同一PCが2つ以上のチャレンジ判定に試みても良いものとする。

 

判定1:作戦+10%

街の様子から、メーデー計画の全貌を読み取ることが出来る。

彼らが最終地点として目指しているのは、橋を越えた場所にある、この街の警察署だ。

 

判定2:心理・交渉-20%

判定に成功すればキミの呼びかけにより一時的に人の波を止めることが出来る。

 

判定3:操縦・白兵-20%

トラックでのバリケード作成や力業で人々の行進を止めることが出来る。

 

失敗:判定3までチャレンジを達成出来なかった場合、クレジットに1D6+4点のスティグマを受けた状態で戦闘が開始される。

 

 

●決戦フェイズ!

 

-イベント9:メーデー!-

登場PC:全員

場所:警察署前

~状況~

 キミたちが街の暴動をあらかた抑え、一息付いていた時のことだ。

 後ろからコツコツと響く靴の音。振り向けばそこに居たのは、オールマザーだ。

 

「ふふ、随分と困った事をされたようですね。いけない人たちだこと♡」

「何故邪魔なさるのですか?皆さま心から幸せそうだったでしょう?それを邪魔することは悪いことではありませんか?♡」

「果たして、日々苦痛に苛まれながら働く彼らを止めることが本当によろしいことなのでしょうか?♡よく居られませんか?会社なんて爆発してしまえというお方♡♡♡」

「あなた方ヒーロー様が守っているこの社会というものは、果たして本当にあるべき姿なのでしょうか?♡いったいどれほどの数の人々が、現状の生活を嘆き苦しんでいると思われですか?屋上で揃えられた靴、海の上を揺蕩う衣服、日々狂う時刻表……。貴方たちは、無責任に人々を守っている……とも言えるのではないでしょうか?♡助けるだけ助けておいて、その後の生活は知らぬ存ぜぬ♡♡」

「私たちは、私たちを頼ってくださった人々を幸せにすることができていると確信しております♡♡」

「……人を想う心のあるヒーロー様♡とても、とぉーーーっても素敵です♡♡ただ、ほんの少し、私の思う人々のあり方と、考えが違うようです♡♡♡大丈夫、話せばきっと分かり合えます。さぁ、私と、オハナシ致しましょうか!ふふ、あなた方のような立派なヒーローが絶望する姿……人々はさぞ助けを求めることでしょう……!♡♡♡」

 

 そしてマザーが大きく天を仰ぐ。すると、彼女の前にふわりとハッピーが、ドスンとココロが着地する。

 

「そういう事だってーー!ごめんねっ!!☆でも大丈夫!!最高にハッピーな最期を迎えさせてあげるから!!☆☆☆」

「これは社会をよりよくするためなのです。どうか、尊き犠牲になってくださいまし」

 

 さぁ、腕を振るえヒーロー!

 

~解説~

 敵の配置は以下の通り。ヴィランデータは本ホームページの「愛の宿り木」を参照して欲しい。

エリア4:オールマザー・ユーアーハッピー

エリア3:Dr.ココロ・クライアント*3・(チャレンジに失敗していた場合、赤羽)

 

 ヒーロー側はエリア1とエリア2のどちらか好きな方に配置すること。

 

~戦術~

オールマザー:基本的にエリア4からは動かず、射程が届くパワーを使い攻撃してくる。ターンの余裕を見つつ【価値観矯正】を放ち、その後は【オハナシ】と【解放の福音】を主に使用することになるだろう。【悪魔の歌】の発動タイミングにも要注意だ。

ユーアーハッピー:マザーと同じくエリア4からは動かずに【天使の輪】と【happy☆beam】を使いヒーローのエナジーを削ってくる。目に付いた者に無鉄砲にパワーを放つので、対象の決定は基本的にダイスを振るのがいいだろう。ヒーローからの攻撃を受けた場合は、【罪悪感の押し付け】で反撃だ。

Dr.ココロ:エリア3で【パーソナルスペース】を使いつつ、壁役として立ち振る舞う。【プラシーボ効果】で基本攻撃を強化してからが本番だ。ヒーローが判定に失敗した場合は、【学習性無力感】に挑戦するのもいいだろう。(ライフに注意)

(赤羽):【大きな鉤爪】でダメージを与えつつ、【オウム返し】の反撃の機会を狙う。【観察学習】のチャンスがあれば、挑戦してみるのも面白いだろう。

クライアント:一番近いヒーローに【自暴自棄】と【泣き言】を放ち続ける。

 

 

●余韻フェイズ!

 

 キミたちの活躍により愛の宿り木は捕縛されることとなるだろう!

 余韻フェイズはヒーローたちの好きに演出してもらいたい。

 

"愛の宿り木、人々の心を手玉に取り弄ぶ集団。キミたちは彼らに打ち勝った。

暴動を起こしていた労働者たちも我に返り、自身の心と今一度向き合うこととなるだろう。

日々精一杯生きる彼らは、必死に伸ばした助けの手を悪魔に掠め取られてしまっただけなのだ。

こうして、キミたちヒーローに救われた彼らは、もう助けを求める先を迷うこともないだろう!

「メーデー、メーデー!」と、今日もどこかで、ヒーローの助けを求める声がする!"

 

 

シナリオ『「メーデー、メーデー」』これにて終幕!